
TEXT by/村山章
主人公は僕だった
自分の人生に、奇跡のラストシーンが綴られるとしたら…。毎日が変わり映えしない生活を送っていたハロルドに、ある日突然、“女性の声”がどこからともなく聴こえてくる!?その声はまるで自分が小説の主人公かのような同時進行で描写する。どこまでも追ってくるその声は突如「ハロルドは直に死ぬ」と。
ハロルドのアパートは意外と遠かった!
ハワードのアパートがあるのはノース・リッジウェイ・アベニューとウエスト・デヴォン・アヴェニューの角。
ちょっとシュールなファンタジックコメディ、『主人公は僕だった』めぐりの第三回は、主人公ハワード・クリックの自宅アパート。映画の冒頭、カメラが宇宙からググッと地球に近づいて、シカゴの街のハワードの家の窓まで寄っていく。その描写を信じるなら、ハワードの家は前回、前々回で紹介した高層マンション街のすぐ傍、ミシガン湖の近くにあることになる。
……のだけれど、実際にハワードのアパートとして使用された建物は、全然違うところにあった。映画の冒頭はあくまでも合成。実際にはさらに北へ25キロ。高速道路を使っても30分かかる場所にある。
行ってみると、確かにあった。劇中では、工事作業員の間違いで鉄球をぶつけられ、壁の大穴が開いたハワードのアパートが。もちろん実際には大穴は開いていませんが。しかし周辺はアパートや一軒家が並ぶ住宅街なのだが、このアパート一軒だけがほかの建物から浮いている。どう浮いているかって、サラリとモダンなデザインのせいか、歴史の蓄積みたいなものを一切感じさせないのだ。
これまた無味乾燥とセンスの良さのちょうど中間という、ハワードの生き方やこの映画のテイストにピッタリな建物。映画のスタッフがよくもまあ、こんな建物を見つけてきたものだと感心するばかりである。
【実際の地図上で確認!】https://goo.gl/maps/BhT5P
同じような建物が二棟並んでいるように見えるが、実は入口が分かれているだけで繋がった一軒の建物。真ん中の三階の窓が、ハワードが暮らしいた部屋。
郵便受け。当たり前だがハワード・クリックの名前はない。
裏に回ってみると木製の階段があり、建物の印象が少し柔らかくなる。
※ビデオパスFacebookで連載されていた記事となります。