
TEXT by/村山章
ビッグ・フィッシュ
ティム・バートンが贈る、心に残る感動作。「人生のストーリー」というお伽話で、みんなを楽しませ、幸せな気分にさせたエドワード。しかし、一人息子のウィルは父の話が嫌いだった。そんなある日、患っていたエドワードの容態が悪化し、実家に戻ったウィルは、残された時間があとわずかだと告げられる。一回目だけどほとんどラストシーン!エドの葬儀にみんな集まった教会へ

エド・グルームのお葬式が撮影された教会。エドがその人生で関わった人々が集まってくる、美しいシーンの舞台となった。
奇才ティム・バートンの数ある監督作の中でも、得意のダークなファンタジーと父子の葛藤と和解の物語を両立させた傑作として名高い『ビッグ・フィッシュ』。壮大なホラ話ばっかり語る父親の若き日をユアン・マクレガーが、老いて余命わずかな晩年をアルバート・フィニーが演じた感動作だ。
ロケが行われたのは、原作者ダニエル・ウォレスの故郷であり、物語の舞台になっているアラバマ州。「なにがあるの?」と訊かれてもこれといった名所を挙げられない田舎だが、行ってみて驚いた。『ビッグ・フィッシュ』のどこかイビツな森の景色など、バートンのテイストだと思い込んでいた景色がそのまま広がっていたから。もちろん美術スタッフの功績も大きいのだが、映画の独特のトーンはアラバマという土地に根差していたのだ。
州都であるバーミンガムの空港から入り、レンタカーを借りてまず向かったのはDeatsvilleという町、いや村? むしろ印象としては集落。映画のラストにあたる主人公エドワード・ブルームの葬儀のシーンが、この近くの教会で撮られたらしいのだ。
事前の調査で教会の名前はわかっていた。「PINE FLAT PRESBYTERIAN CHURCH」。しかし「PINE FLAT CHURCH」という教会は検索するといくつか引っかかったが、Deatsvilleの近くにはない。現地で誰かに訊こうと思ってやっては来たものの、あまりにも小さい町で、郵便局を訪ねてみたが人っ子ひとりいない。
その時、道路沿いの民家からケータイを片手にひとりの男性が出てきた。電話が終わるのも待っていたら、赤い車がやってきて女の人が降りてきた。どうやらこの家のご夫婦らしい。千載一遇のチャンスと話しかけたが、教会の名前を言っても「わからない、この辺りには教会がいっぱいあるからね」という返事。そこで映画の一場面を見てもらったら、すぐにピンと来たらしい。「その教会なら北に10分くらい走ったところにあるよ。道より奥まったところにあるから、見逃さないように、右側をよく見るんだよ」
おかげであった!ありました!間違いなくエドワード・ブルームの葬儀が行われた教会を発見。さらに親切なご夫婦の奥さんとは、数日後にまったく別の場所で再会することになるのですが、それはまた別の話。
【実際の地図上で確認!】https://goo.gl/maps/te6DU

Deatsvilleからだと143号線を北上して右側。バーミンガムから来ると南下して右側。だだっ広い綿花畑の反対側に、「PINE FLAT CHURCH」という看板が立っている。

人の気配はなかったが、毎朝なのか日曜なのか朝10時に礼拝がある模様。

かなり古い建物のはずだが、わりと最近メンテナンスされたようで意外とキレイな外観。左奥に見えるのはエド・ブルームも埋葬された墓地。

墓地で見かけた夫婦で一組の墓石。旦那さんの没年は1904と書いてあったから110年前のもの。

中にはオモシロがって作ったような新しい墓石も。
※ビデオパスFacebookで連載されていた記事となります。